「小次郎・まりなEXTRA2」
パンパンパン!! 「おおーーー!!!」 電光掲示板にパーフェクトの文字がともる。遊園地のゲームの射的コーナーで歓声 が上がる。そしてその歓声の的になっている一人の男と一人の女。 男は背が高く、髪はかなりの長髪で髪を後ろで結っている。女は女性にしては比較 的背が高く露出の高い服を着ている。両方とも美男美女で、かなり目立つ。 それもそのはず、二人はその歓声をどこか当然という風に受け取っていたのだ。 「おめでとうございます!!優勝です」 そこのコーナーの司会をやっている人がマイクで叫ぶ。そしてその司会は優勝 商品を持ってその二人に渡す。 「イエーイ!」 俺、そう天城小次郎は俺の隣にいる女性、法条まりなとパンと手を合わせる。 今俺の隣にいる女性、法条まりな、内閣調査室という特殊機関に勤めるエージェン トで現役時代は天才と 呼ばれていたらしい、まあ確かにそう呼ばれるのは分からないでもない。確かにこい つはかなり切れる。 今は現役を退き、教官職に就いていると聞いたが詳しいことはよくわからん。 「なかなかやるわね小次郎、足手まといにならなかっただけ誉めてあげるわ」 「なーにが誉めてあげるだ!偉そうに」 「だってー、今の決勝の時に二発はずしたじゃなーい?フォローに苦労したわー」 「ぐ」 俺は言葉に詰まる。そう、俺様としたことが決勝でねらいをはずしてしまったの だ。前に使っていた馴染みの情報屋を失って以来丸腰で生活していたため勘が鈍って いたのだ。 「まあまあ、まりなお姉さんが昼飯おごってあげるからおだまんなさい」 「ほう、ずいぶんと気前がいいじゃないか」 「まあ、強引につきあわせちゃったのは確かだしね、じゃ、どこいこうか」 「そうだな・・・・・・って」 「何で俺とお前がデートしている感じになっているんだよ!」 「しょうがないじゃない、デートだもん」 「・・・・」 しれっとしているまりな。 ん?何?何でこの俺がまりなとデートしているか?ああ、みんな聞いてくれよ、実 はこういうことがあったんだ。 今からさかのぼること丸一日。ファミリーレストランにて 「さー、じゃんじゃん頼んで、私のおごりだから!!」 ファミリーレストランにて高々と声を上げる法条まりな。その正面には俺と・・・ ・・俺のかつての恋人、桂木弥生が座っている。 弥生はさっきから不機嫌そうに煙草を吹かしている、それもそうだ、俺と一緒なん だからな。 「いったい何のようなんだまりな?一緒に食事をしようと誘われて来てみれば」 「まーまーこまかいこと言わないの」 まりなは相変わらず笑っている。 「で、本当に実際何のようなんだ?」 俺もまりなに訪ねる。 「もう、二人ともせっかちね、いいわ、実はね小次郎、あなたにお願いがあるの」 「お願い?何だそりゃ?」 ![]() 「うん、実は私の恋人になって欲しいの」 その瞬間時が止まる。 しばし沈黙。 そして時は動き出す。 「何いってんだまりな?血迷ったか?」 あきれ果てた顔でもうどうでもいいという口調で喋る弥生。 「・・・・・・血迷ったとはずいぶんとしたいわれようだな」 「なんか言ったか?」 「別に」 「いっておくがまりな、もう説明する必要もないと思うがこいつの女癖の悪さは」 「ちょっとちょっと弥生、誤解しないでよ」 まりなはあわてて弥生を制止する。 「私の本当のお願いは、私の恋人役を演じて欲しいの」 「こいびとやくーーーー?」 俺は不機嫌そうに答える。 「まさかストーカーにねらわれていて、その撃退のために俺を恋人役にするんじゃな いだろうな?」 「その通りよ」 俺は一瞬間をおく。 「まじか?」 「まじ」 「・・・・」 俺は黙り込む、こいつにストーカー!?まあ確かにこいつの容姿は美人にはいるこ とは入るんだろうが・・よりによってこいつをストーカーするとはな、逆にそいつに 同情するぜ。そのうち痛い目に遭うな。 「ちょっと小次郎、全部聞こえているんだけど」 「そうか、それは気づかなかった」 「・・・・」 「いつものテンションで痛い目にあわせればいいだろうが、お前だったら楽勝だろ ?」 「それが全然懲りないのよ、一回投げ飛ばしたら何かますます私に惚れちゃったみた いで」 「ハハは、凄い奴だな、女王サマーって奴か?」 「変なこと言わないでよね」 「で、そのストーカーをしている奴の年齢と容姿、見分ける特徴とかあるか?」 「そうね、年齢は大体二十代の中盤、容姿は普通、見分ける特徴というのはこれと いってないわね、でももう一度顔を見ればそれと見極められるわ」 「ふーん、そこまで分かっているなら内調の他の男に頼めばいいじゃないか」 「嫌よ、変な噂になったら面倒だし、それにこんな事気軽に頼める男ってあんたし か思いつかなかったのよ」 「はあ、何か複雑だな」 「ちょっと待て」 今まで黙っていた弥生が口を開く。 「今の二人の話を聞いて思ったんだが、別に私がいる必要ないじゃないか」 その弥生のセリフを聞いて俺もそう思う。そうだな、何でだろう? 一方まりなは俺らの様子を見てはーーーーーーと長いため息を付いた。 「な、何だよ?」 「別に」 まりなはコホンと咳払いをする。 「だって当然といえば当然じゃない、弥生の彼氏を恋人役に頼むんだからその弥生の 許可を取るのは親友として当然よ」 「・・・・」 そしてまた時が止まる。 しばし沈黙。 そしてまた時は激しく動き出す。 「ちょっとまてまりな!!何で私が未だにこんな奴の恋人なんだ!?こんな発情マ シーンと!」 悪態を付く弥生、さすがに少しむっとくる。 「発情マシーンで悪かったな!」 「本当のことだろー?本当のことを言って悪いのか?」 馬鹿にしたような目で見る弥生。 「なんだよ?」 「なんだよ」 にらみ合う俺ら、そこでまりなが話しかけてきた。 「じゃあ小次郎が私の恋人役をしてもいいのね弥生?」 「当然だ、何故私の許可を取る必要がある?」 「小次郎は?」 「ああ、恋人役でも何でもやってやるよ、別に弥生には関係ないしな」 というそんなこんなで今の状況に至っているわけだけど・・・。 今にして思えばすべてまりなにはめられていたような気がする。まともに言ったら 俺が断るの知っていて弥生を絡ませたような・・・・クソ、こういう所はまりなが上 手だ。 「ほら小次郎!どうしたの早く行くよ」 俺の思考を遮るまりな。もういいや、こうなったんだから楽しもう今日は。そう思 わなきゃやってらんねえ。 「へいへい」 俺はまりなに付いていく。 そしてその二人の後つけていく二つの黒い影があった。 遊園地内にあるレストラン。私と小次郎は今そこで昼食をとっている。 私の名前は法条まりな。内閣調査室という特殊機関のエージェントを育てる教官を しているの。ちょっと前まで現役だったんだけどね、とある事件で現役を引退した の。 え?その事件のこと?ごめんなさい、そのことはあまり喋りたくないの。 んで私の前で遠慮なしにバグバグ昼食を食べている男。 彼の名前は天城小次郎、自称天才名探偵、容姿はなかなかの美形の部類にはいるの ではないかと個人的には思っている。そして頭も切れ、度胸もある。 しかしこいつの女癖の悪さは天下一品!そのせいでどれだけ弥生と氷室さんが苦労 して心を痛めているか全然気づかない奴!同じ女としてどこがいいのか全然分からな いんだけど・・・あの二人はこいつに惚れているのよねー。男と女はロジックじゃな いという典型的な例ね。 しかし・・・こいつとの縁は非常に運命的だった。かつて私と小次郎は同じ事件を 追っておりそのたびに何回か関わってきた。しかもその関わり方というのはどう見て も誰かが仕組んだのではないかと言うぐらいシナリオ的な物だった。 そういえば最初は私は小次郎を容疑者をしてマークしていたのよね。懐かしいわ。 「ん?何だまりな、俺の顔じろじろ見て」 「別に」 「ははーん、さては俺に惚れたな?」 「誰が、私はまだ妊娠する気なんてないですからね」 「・・・・」 「お前今さらっと凄いこと言ったろ!」 「あーら、間違っているかしら?」 「ぐ、人を野獣みたいに」 「野獣でしょうが」 と端から見ればカップルが仲良くやっているとしか見えない光景。そしてそ の二人を遠くから望遠鏡で伺う独りの影があった。 「ふー」 その影、女性は軽くため息を付く。眼鏡をかけ髪はポニーテール。服はなるべく目 立たないよう地味な服を着ている。 そう、私、桂木弥生もまたこの遊園地に来ていたのだ。 今私は法条まりなという私の友人を変装して尾行している。 え?眼鏡をかけ髪型を変えるだけで何が変装だって?やれやれ分かっていないな。 変装は派手なイメージがあり、女装、男装などが例としてあげられているがあれはと んでもないことだ。 性別を偽るのは変装の最上級の高等技術であり、熟練した探偵でも滅多にやらな い。 何故なら非常に目立つのだ。変装というのは目立つことは命取り。他の人に注目さ れてはおしまいなのだ。本来の変装というのは服装を変えるだけで十分に効果があ る。 みんなはいちいち通りがかる人の服装何て気にしてないだろ?思っている以上に風 景としてとけ込んでいることさ。 そして知人を尾行するときはその知人に見せたことのない髪型をすることが効果的 なのだ。 私の場合ならポニーテール姿をまりなや小次郎に見せたことなどないし眼鏡姿も同 様だ。 まあ本来眼鏡は特徴となってしまうのだが、今回はそんなにも固執する必要はな く、あくまであの二人が知らないで格好できたのだ。 え?何故尾行しているかだって?コホン、そ、それはだな、みんなは知らないと思 うが小次郎の女癖の悪さは天下一品でな、女と見れば飛びつくとんでもない奴なん だ。 それにまりなは美人で色気もある。今回のデートはフェイクなんだがあの発情マ シーンがこのチャンスを逃すわけがない!言葉巧みに誘うに決まっている!まりなは 武術にも長けており普通の男には負けないのだが、あの小次郎も腕っ節はかなりの 物。友人の貞操を守るがため万が一を考えてこうやって尾行しているわけだ。 分かったなみんな、別にヤキモチを焼いているわけじゃないぞ。うんうん。 というわけで私は引き続き尾行します。 「今度はここにするか?まりな」 「え?」 まりなは俺の指した方向を見る。そこにはお化け屋敷があった。ここの遊園地も大 体のアトラクションは乗り尽くしたし、残ったのはもうこんな所だ。 「・・・・」 まりなはその瞬間顔色が変わる。・・・あれ? 「お、お化け屋敷?いいわよいかなくて」 「何でだよ?」 「どうせ作り物だし、時間の無駄だわ」 どーも、様子がおかしいな。ふーーーーーーーーーーーーーーーん。 「怖いのか?」 「だ、誰がよ!!」 「じゃあいいじゃねえか、いこうぜ」 「い、いいっていっているでしょ」 「何で?」 「な、何でって・・・作り物だし・・」 「怖いのか?」 俺はまりなに微笑みかける。その微笑みの意味を嫌と言うほど感じたまりなはつい に観念したようだ。 「!・・・・・わ、分かったわよ!!行けばいいでしょ行けば!!」 「さすがまりな、話が分かるぜ」 こうして俺達はお化け屋敷ののれんをくぐった。 お化け屋敷の中は真っ暗になっており所々に緑や赤の電灯が薄暗く明かりがついて おり、不気味な雰囲気を醸し出していた。まあお化け屋敷なんだから当然といえば当 然で解説の必要なんてないんだけど。 俺はちらりとまりなを見る。暗くて良く分からないが顔がこわばっていることが分 かる。くっくっく、あのまりながこんな顔するなんてな、この顔見ただけでも十分に 価値があるぞ。 ちなみに最初の設定は墓地、一番ありがちなパターンだ。 ちなみに俺はこの手のものに関してはさほど苦手ではない。まあ本当に幽霊という ものを目撃したら腰を抜かすかもしれないが・・・俺は今までこの心霊体験というも のをしたことがない。 そのとき急に人形が現れる。 「きゃあ!!」 いきなりまりなは俺に抱きついてきた。 「おいおい、落ち付けって、作り物だろうが」 「う、うるさいわね、ちょっとびっくりしただけよ」 つよがるまりな、そしてまた歩き出す。 「おいまりな」 「何よ?」 「いつまで俺の手を握っているんだ?」 「あ」 あわて手まりなは俺の手を離す。 「なんだまりなー、やっぱり怖かったのか?別にいいぞ、心細くて手をつないでほし いんだったらそういえば」 「ひ、必要ないわ、なにいってんのよ、このまり・・・」 また人形が現れる。 「きゃあ!!」 またまりなは俺に抱きついてきた。俺はまりなを見る。 「わ、悪かったわね、苦手なのよこういうの!!」 「ふん、はじめっからそういえいいんだよ、まあ、そう怒るな、後で夕飯おごってや るから、ほら」 俺はまりなに手を差し出す。まりなは一瞬驚いた顔をする。 「手をつながなくていいのか?」 「・・・・」 まりなは黙って俺の手を握る。 それにしてもこいつのこういう姿は本当に意外だ。最初であったときは高飛車でと んでもない女と思っていたのだが・・・・こいつにこんなかわいい一面があるとはい が 「はう!!」 「きゃ!ど、どうしたのよ小次郎!!いきなり大声上げて!」 俺はあたりを見渡す。あたりに人のいる様子はない。 「ど、どうしたの?」 「ま、まりな・・・今なんか・・・・殺気を感じなかったか?」 「さっき?」 まりなもあたりを見渡してみる。 「別に誰もいないわよ、まさか」 「いや、その類ではないような気がする・・」 「は?」 「何か・・感じたことのある・・・」 「なに訳の分からないこといってんの、早く行きましょうよ」 「あ、ああ」 俺はまりなに引っ張られる。まりなは早くここから出たい様子だ。 うーん、何なんだろうさっきのやつは・・ 小次郎とまりなの少し後物陰に隠れるように歩いている一人の女性。そう桂木弥生 だ。つまりさっきの殺気は弥生だったのである。 (なーーーにをやっているんだあいつらは!!いちゃいちゃして!本当にカップルみ たいじゃないか!) そこまで考えて私ははっとする。 な、何を考えているんだ。小次郎とはもう何でもないはずだろ?そうだよ、そう だ、うんうん。 「ねえ小次郎」 「何だ?」 「あのさ・・・」 「何だ早く言え」 「へいお待ち!」 アルバイトらしい店員が牛丼をどんと二つ俺達の前に置く。 「なーーーんで牛丼屋なんかに誘うのよ!!」 「別にいいじゃねえか、俺のおごりなんだから贅沢言うな」 俺達はあの後遊園地が閉園するので夕食を取ることになり今は牛丼屋に来ているの だ。 「小次郎がおごってくれるって言うからどんなところだと思えば」 「貧乏探偵に何を期待したんだ?」 「期待なんてしてないわよ!デートで普通牛丼屋に誘う?」 「そうとも言い切れないぞ、牛丼屋に行くカップルというのは深い仲だというしな」 「う、まあそういわれればそうだけど」 「まあそういうことだ」 納得したようなしないような、そんな感じでまりなは牛丼を食べ始めた。 「ふうー、おいしかったわね」 「全く、なんだかんだ言って特盛り二杯もくいやがって」 「細かいこと言わないの、男の甲斐性よ」 「甲斐性とは少し違う気がするんだが・・」 「なんか言った?」 「別に」 あれからしばし談笑の後俺らは牛丼屋を後にする。そのときまりなは腕時計に目を やる。 「あらら、もう午前1時じゃない、」 そういうとまりなはくるっと俺の方を向く。 「明日仕事だし、そろそろ帰らなくちゃ、もちろん送ってくれるんでしょ?」 まりなの言葉に俺はため息を付く。 「はいはい、もうこうなったらどこまでも付き合ってやるよ」 「ねえ・・・・」 まりなが突然俺に話しかける。 「何だ?」 答える俺、食事も終わり今はもうまりなの家の前に俺達はいる、まりなはふうとた め息を付いた後空を眺めていた。 「真弥子ちゃん・・・・・元気しているかな?」 「ん・・・」 突然そんなことをつぶやくまりな、俺は答えに迷う。 「いつか・・・真弥子ちゃんと小次郎でさ、もう一回遊園地とかに行きたいよね」 「・・・・」 俺はまりなを見つめる。まりなは愁いを帯びた表情をしている。その様子を見て俺 も天を仰ぐ・・・。それと同時にやりきれない思いになる。 あの事件は・・・本当に悲しい事件だった。あの事件は俺にとって一生忘れられな いことであるだろうし、忘れてはいけないことだと思う。 「小次郎!」 急にまりなは俺に話しかける。 「な、なんだ?」 「今日はありがとね、私のわがままに付き合ってもらって、楽しかったわ」 「あ、ああ、気にするな、俺もまあまあ楽しめたし」 不意にまりなは俺に近寄ってくる、そして・・ チュッ 「!!!!」 俺は驚く、いきなりまりなは俺の頬にキスしてきたのだ。 「な、なにすんだまりな!!」 「何それ?その言いぐさはないんじゃない?安心してよ、弥生には内緒にしておくか ら」 「そういう問題じゃないだろうが!!」 「あらうれしくないの?」 「だから、内緒にしておくといったが大体今の現場を弥生に見られていたらどう言い 訳するつもりなんだ?この前だって納得させるのに一週間もかかっただろう?(小次 郎・まりなEXTRA参照)」 「大丈夫よ、そんなありがちな偶然が二回も続くと思う?どこぞの三流ドラマじゃあ るまいし」 「んー、まあそれもそうだな」 「そうよ」 「はっはっはっは」 ![]() ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 「は!!!」 突然俺達二人の背中に突き刺さる殺気。数々の修羅場をくぐり、かたや特殊機関の 天才と呼ばれた女性エージェント、かたや桁外れの洞察力を持ちかつては業界トップ の探偵といわれた男凄腕探偵。その二人が後ろを取られ、その殺気で動けなくなる。 こういうことを出来る奴と言えば。 俺らはゆっくり振り返る。 「でたーー!!!」 そこにはこの世のものとは思えない綺麗な笑顔を浮かべた、そう桂木弥生の姿が あった。 「やややややややややややよい」 二人はお互いにしがみついて弥生を見る。まりなは必死でフォローする。 「や、やよい・・あのねあのね・・いまのはね、じょうだんでしたのよ・・・ごかい しないでね?」 上目遣いで弥生の表情を伺うまりな。 「ああ、知っているよ」 「え?」 俺らは驚く。 「別に何も感じちゃいないさ、まりなの性格はよく知っているし、ほっぺにキスぐら いしたっておかしくないさ」 「あ、あらそう」 拍子抜けしたようなまりな、一方ちょっと複雑の俺、うーん、怒っていなかったの はいいんだが、それはそれで・・・・・・・あれ?そういえば・・ 「まりな」 「何?」 「そういえばついに出てこなかったな、おまえのストーカーが・・・」 「あら、そういえばそうね、どうしたのかしら?」 「ストーカー?」 弥生はにこりと笑う。 「ひょっとしてこいつのことか?」 そういうと弥生は物陰から一人の男を引きずってくる。そこには白目をむいた一人 の男がいた。 「お前らがデートしている間ずーーーーーっと後を付けていたから不審に思ってな、 ついさっきちょっとお仕置きをしてやったところだ、もう二度とストーカーをしない と快く承諾してくれたよ」 殺気から天使のような笑顔を一つも崩さず喋る弥生。 「は、はははは、はは」 一方俺らは笑いが引きつる。怒ってる、絶対に怒っている! 「大丈夫か弥生、怪我とかは」 「大丈夫だよ小次郎、お前ほどではないが私もそれなりの修羅場は経験しているんで ね、これぐらい造作のないことだ。そうか、気づいていると思っていたが気づいてい なかったか、それはそうだよな、二人共ものすごーーく楽しそうにデートしていた からな、気づかないのも当然か」 弥生は落ち着いていてそれでいて冷静な口調で話す。 「やよい・・・言葉がちょっととげとげしてる・・」 「じゃあな二人とも、お幸せに」 いきなりそういうと弥生はきびすを返して歩き出した。 「ちょ、ちょっと待ってよ弥生!」 「小次郎!」 「分かってる!」 俺らはあわてて弥生の後を追いかける。 そしてまたまた弥生の機嫌を直すのに二人掛かりで一週間もかかりましたとさ。 |