アフターサービスにご注意〜中編


大切な人を傷つけられた女性の怒りに勝る力は無い・・・


そしてそれを抑えつける力も無い・・・

もう・・・誰にも止められない。




険しい顔をしながら雑居ビルの一室を見続ける女性がいる。

まりな「奴・・・・まだ帰ってこないのかしら・・・」



苛立った感情を かれこれ3時間ぐらい抑え続けている彼女、
もうそろそろ限界点をぶち切って、今にもビルごと破壊したい気持ちで一杯のようだ。


(よくも、よくも本部長を・・・奴ら、絶対許さない!)

奥歯を力いっぱい噛み締める彼女の表情は夜叉のごとく凶器に満ちていた。
数分後、ターゲットの部屋に明かりが灯る。


(帰ってきた・・・よし、乗込むわよ!!)

目的の部屋は6階、まだ20代とはいえ病み上がりの体での突入は少々辛い。

「もぉ〜なんでエレベータも無いのに6階に住んでるのよ〜!」

ものすごい形相で階段を駆け上がり目的の部屋にたどり着く。

「スーハ〜」

小さく息を吐く彼女だったが、一気に階段を駆け上がって来たお陰で
思うように呼吸のリズムを整えることが出来ない。


「ふう〜」

ようやく落ち着いた所で、一人っきりのブリーフィングモードに入る まりな

(このままの姿だと怪しまれる可能性が高いわね・・・何とか変装しないと・・・)

世界で一番であろう短いブリーフィングを済ませ、
あたりを見回すと丁度いい所にクリーニング店のアルバイトと思われる青年が
大量のクリーニング済みの衣服を運んでいる姿が目に入る。


まりな「ちょ〜っとゴメンなさい〜」

青年「???」

「アチョ〜!!」

まりなは、青年の後首に手刀を打ちつける。手加減はしていると思われるが・・・
まあ当たり前の事ながら哀れな青年はその場で倒れ気絶する。
まりなは、辺りに散乱したクリーニング済みの衣服の山をあさりだす。


<ガサゴソガサゴソ>

(うわ〜これって前から欲しかった服・・・ちょっと着てみようかな・・)

勝手に試着する彼女だったが、次第にその表情が段々暗くなっていく・・・

(サイズが、合わない・・・・ガガガ〜ン)

かなりショックであったのだろう、彼女はその衣服を外に放り投げた。
注意するがこれは完全に罪である。よい子は真似しないように願いたい。


(次よ、次っ!!)

また服の山をあさりだす彼女・・・
良く考えて見ればこんな所で着替えをする事自体凄い、
健全な男が見れば鼻じ「ブー」ものである。
しかし非常事態なので、そんな事は言っていられない・・・らしい。
そうこうしているうちに ようやく目的の服が見つかったようだ。


(メイドのコスチューム・・・・・・やっぱ意表を突くならこれよね〜)

メイドの服?・・・何故そこに存在していたのか不明だが、
彼女は素早く着替え、ちゃっかりとポーズを決める。


まりな「メイ〜ク・アップ!なんちゃって〜」

いろいろ準備に時間をかけたが、ようやく次の行動に移る。

<ピンポーン・・・>

チャイムが鳴るとあたりの音が一瞬、無音になる錯覚を感じさせる。
(ゴクッ)息を呑む彼女は冷静さを保ちながら相手からの反応を待つ。


<誰だ?>

インターホンから低い男の声で問いかける。
良く見ると、このインターホンはどうやらテレビカメラ内臓のようだ。


(こちらの姿は見え見えってことね〜変装して正解だわ〜)

変装のことはこの際どうでも良いように思われる・・・

「ども〜ピザの配達に来ました〜うふ!」

どう聞いても最後の台詞は怪しい・・・
しかし男はどうやらメイドフェチだったようで
怪しみもせずドアを開けた。


男「ほ〜う 最近のピザの配達ってのは過激なんだねえ〜」

男は、そう言いながらいやらしい目で、まりなの体を見ている。

まりな「今回だけ・・・ねっ!」

(バキッ! ボコッ! ゲシッ! チーン!?)

男「あううっ! ×○×?;@?」

  最後の一撃は男にしか解らない痛みと言うやつであろう。
急所をビンゴされた男は、泡を吹いてその場に倒れる。


まりな「さ〜てと、貴方のお仲間の事についてお聞きしましょうか・・・」

「うふふっ」と笑いながら倒れた男の襟首(えりくび)を掴み部屋に引きずり込む。
そして数分もしないうちに男の悲鳴がドアから響く。


男「うぎゃあああああ!!やめてくれ〜」

まりな「ふっふっふっ・・あはっはっはっはっ!」

彼女の尋問(拷問?)は、それから数時間続いた・・・・・(合掌)



【まりなサイド から 弥生サイドへ】



<<Pi〜 ハロハロ・・・ゴメン〜今夜行けなくなっちゃった。>>
しばらく沈黙が続いて。
<<んで〜今夜は行けないけど明日は絶対行くから・・そうだ!アイツに・・プチッ>>
そこでメッセージは終わっていた。


弥生「はぁ〜」

起きたばかりの弥生が、タバコに火をつける。

(結局〜今夜は一人か・・まあしょうがない・・軽く酒の友でも作るとするか・・・)

ベットから立ち上がり近くにあったエプロンを身に着け、ゆっくりと台所に向かう。
ところが突然、彼女の目の前がボンヤリと歪み体がふらつく。


(どうした?体がダルイ・・・頭がボーっとする・・・)

やっとの思いで台所の前につき水道の蛇口を回す。
そこから出てきた水で顔を洗い流し少しでも火照った頭を冷やす。


弥生「そういえば・・・パパのマイクロビデオテープ・・・・」

少し気分が良くなった弥生は、ふとさっきのテープのことを思い出し
すぐさまテレビの横にセットされている専用の再生機で再生する。
しかし数分経過しても映像も音声も全く出力されない。


弥生「何も入って無いのか?」

そう言いながら、早送りボタンに手を触れよう手を伸ばすが、
彼女はそのまま床に倒れる。


(かっ体が動かない・・・・・・)

モウロウとした意識の中で、彼女は亡き父、源三郎の声を聞く。

<<弥生・・・・>>

弥生「パッ・・パパ?」

源三郎はこれから自分に起こるであろう事を 弥生に話していた。

<<最後になるが弥生、この話を聞いて小次郎を責めないでやってくれ
多分アイツの事だからお前に真実を語ろうとはしないだろう。
それに奴にはその事について語るなと、私も釘を打ってしまった。
その事についてお前たちが苦しんでいないか気がかりだが・・・>>


弥生「パパ・・・うっ」

そのまま彼女は意識を失う。それから数十分後、

<ピンポン〜>

ドアのチャイムが室内に響きわたる。



【弥生サイド から 小次郎サイドへ】



小次郎「ふぁ〜 ん〜?」

まりなが帰ってからずっとソファーで寝ていた小次郎がようやく
起動する・・・・じゃ無かった〜起床する。


小次郎「うううう・・・ダルイ〜」

(さすがに寝過ぎたみたいだ〜おっと!もうこんな時間だ、飯でも食いに行くか・・)

   <プルルル〜プルルル〜>・・・丁度いいタイミングで電話が鳴る。

小次郎「だれだぁ〜?」

(ったく、メシ食いに行こうと思う時に限ってかかって来るんだよな〜電話のベル
切ったろか!モジュラージャックぅ〜!
しかしまあ〜仕事の依頼だったら氷室に殺されるからな〜無視するわけにもいかないし
って言っても氷室は今居ないんだった・・・今更何言ってるんだろう俺・・・)


<カチャ> 

小次郎「もしもし〜こちら天城探偵事務所〜」

まりな「ハロハロ〜 こちら内閣調査室〜」

小次郎「なんだ〜法条か・・・・・」

まりな「なんだ〜法条か〜じゃ無いわよ!!相変わらず失礼ね〜」

  小次郎「で?また何かくだらない事、言うんじゃないだろうな!」

まりな「ピーンポーン」

小次郎「・・・・・・切る」

まりな「ちょっと待ってよ〜冗談、冗談だってばあ〜」

まりな「あのね〜ぶっちゃけて言うと、私の代わりに弥生の所にワインを持っててくれないかしら?」

小次郎「・・・・・・・・・」

まりな「おお〜い 聞いてる?」

小次郎「・・・・・・落ちる」

まりな「一部の人にしか理解できないこと言わないの!・・・っで、行ってくれるの?」

小次郎「断る・・・」

  まりな「弥生には、私の代わりに小次郎が行くって言っちゃったんだけどな〜」

小次郎「法条お前・・・俺と弥生との関係知ってて言っているのか」

(実は良くわかっていない ワ・タ・シ・・・でもここで引く訳にはいかないわ〜)

まりな「そっ、そうよ〜それを承知で頼んでるのよ〜」

小次郎「ふぅ〜しょうがないな〜」

(法条には氷室を預かってもらっている恩もあることだし・・・)

まりな「行ってくれるの〜!!」

急に声が明るくなる彼女。

  小次郎「ただし 今回だけだからな・・・」

  まりな「サンキュ〜・・っでワインは、外のドラム缶の横に隠してあるから〜」

小次郎「???・・・って事は、お前最初からその・・・」

まりな「え?・・あっ、あははっ何のことかな〜 じゃ、じゃあそういう事でよろしくね〜」

<プツ・・・プープー>

小次郎「あいつ・・・・・」

そう言いながら <ドン!> 壁に拳を軽く打ち付ける。

小次郎「あああっ!〜手の傷口が開いてしまったああああああ〜」

   前回負傷している所にトドメを刺してしまった小次郎は、傷口に巻いてあった包帯を巻きなおし、
外に隠してあったワインを持って弥生の住むサンマンションに向かう。




【小次郎サイド から まりなサイドへ】



彼女は男から聞き出した情報を元に奴らのアジトのある場所にやって来た。

まりな「おっかしいな〜確かここのはずよね・・・」

しばらく待っても誰も出てこないので少々不安になった彼女・・・

だがそれから間もなく・・・戻ってきたようだ。 (どうやらここで間違い無さそうね。)

まりなは、男たちが入って行った倉庫のドアの前に立つ。

(よ〜し!見てらっしゃい〜 私がタップリと、オ・シ・オ・キしてあげるわ〜!)

<どんっ!>

勢い良くドアを蹴破り中に潜入する! しかし辺りはしーんと静まりかえっていた。
銃を構えながら物陰に隠れた彼女は辺りの異常な静けさに焦りを感じ始めた。


(どういうこと? 誰もいないなんて・・・まさか気付かれた?)

男「おやおや〜本人自ら来てくれるとは、誘う手間が省けましたよ」

   頭上から聞こえる声にまりなはすぐさま反応し銃口を向ける。しかし男は少しも怯まなかった。

まりな「銃口を向けられてるのにずいぶん余裕ね・・・」

男「そうでもないさ〜君が引き金を引けば、この倉庫ごと爆発するんだからねえ〜」

まりな「爆発って?」

男「自分の周りを見たまえ。」

まりなは周りを見渡して苦笑しながら答える。

まりな「ふぅ〜ガス燃料タンクの山ね〜パーティ会場にしては少し物騒じゃない?」

男「君のためにわざわざ用意したんだが、お気に召してはもらえなかったようだね。」

まりな「そんなことより!どうせならパーティの主催者の名前ぐらい最初に教えてくれてもいいんじゃない」

男「おっと 自己紹介が遅れましたね〜これは失礼しました・・・」

男は紳士な態度でこう言った。

男「私はテラーと言います。以後、お見知りおきを」

まりな「テラー・・嘘・・・そんなの嘘よ!!」

男の名を聞いて動揺した彼女は次の瞬間床に倒れていた。

テラー「あまり女性を手荒に扱ってはいけませんよ〜プリーチャー」

プリーチャー「ふっふっふっ」

不気味な笑い声が倉庫内を包み込む・・・・



   【まりなサイド から 小次郎サイドへ】



<ピンポーン ピンポーン>

なんどチャイムを押しても弥生の返事が無い・・・どうも様子がおかしい。

<ガチャ・・キィィィ・・>

以前、弥生から渡されてそのままだった部屋の鍵を使って中に入る。
そこで俺が見たのは倒れている弥生の姿だった。


小次郎「や、弥生いいい!」

床に倒れている弥生を抱き起こして自分の耳を彼女の胸に当てる。

<トクン・トクン・>

どうやら心臓は動いてるようだ。でもかなり体が熱い・・医者を呼んだほうが良さそうだな。
電話を取ろうとしたその時、白くて美しい手が俺の手を抑える。


弥生「パパ・・・行かないで・・・」

どうやら俺とおやっさんを間違えているみたいだ。

小次郎「俺だ小次郎だ、弥生! しっかりしろ!」

弥生「小次郎・・・パパは?・・・パパは?」

小次郎「もう・・おやっさんは居ない」

弥生は、悲しい目で俺に答える。

弥生「解っている小次郎・・・嘘でもいいから・・もうスグ帰って来るって言って欲しかった。」

小次郎「・・・・・・・」

弥生「パパからのメッセージを聞いたよ小次郎・・・」

小次郎「おやっさんからのメッセージ?」

弥生「私が部屋を掃除していたら出てきたんだ・・テープが・・・」

小次郎は少し考えて彼女に答える。

小次郎「弥生・・・これから話す事は今のお前にとって酷なことかもしれないが聞いてくれるか・・・」

弥生「・・・ああ」

小次郎は弥生に全てを伝えた。あの悲しい事件の全貌と共に・・・・
弥生は彼が静かに語るのをただ黙って聞いている。
そして全てを語り終えた時、彼女の目から一筋の涙が流れる。


弥生「すまない・・小次郎・・辛かったよね今まで・・・なのに私・・・」

小次郎は何も言わず彼女を抱きしめる。

弥生「でもなぜもっと早く言ってくれなかったの?そんなに・・んっ!・・・」



小次郎は、次の言葉を聞く前に自らの唇を彼女の唇に重ねる。
そして小次郎は、彼女の目を見つめながら言う。


小次郎「弥生、俺と一緒に暮さないか・・弥生の作った料理も久しぶりに食べたいし」

彼女は少し考えた素振りを見せる。

弥生「いいよ小次郎・・だが!残さず全部食べてくれよ。」

   小次郎「ふっふっ・・わかった、残さず全〜部、平らげてやるよ・・んっ?」

小次郎が話し終えると同時に今度は彼女の方から口ずけをする。

小次郎「体の調子はもう大丈夫か弥生」

弥生「少しダルイな・・・」

小次郎「じゃあ早く寝た方がいい、俺が付いててやるから安心して良いぞ。」

弥生「ああ・・・ありがとう・・こ・じ・・ろ・・・う・・」

小次郎の胸の中で寝息を立てる弥生。その表情はとても穏やかであった。


続く・・・・





次回予告??




まりな「へえ〜・・ほう〜・・なるほどねえ〜」

弥生「なっ、なんだよ急に・・・」

まりな「お熱いことで〜」

弥生「えっ、え〜と 次回は・・・」

まりな「誤魔化してやんの!」

弥生「マジメに予告するの!」

まりな「へいへい」

?1号「ちょ〜っと待った!」

まりな「誰?君たち・・・」

弥生「前編の次回予告に登場した人たちだよ」

まりな「そうだったっけ?〜それで今日は何の用かしら」

?1号「なんで俺たちの出番が無いのかな今回?」

?2号「そうよね〜ムカツクから書いてる奴、解剖しようかしら・・・」

まりな「かっ、解剖?」

弥生「だって後編に出る予定じゃ無かったの君たち〜」

まりな「確か今回は中編のはずよね〜」

?1号&?2号「そっそうだっけ?」

小次郎「弥生〜そろそろ事務所に帰るぞ〜」

弥生「ああ〜わかった小次郎〜今行く!」

弥生「じゃ、そういう事で後はよろしくたのむ!」

まりな「・・・・・・・」

まりな「もおおおおお!こうなったらやけくそだわ〜!」

まりな「次回は、後編よ 後編! わかった! 絶対見なさいよ! 以上」

まりな「私帰るから後は頼んだわよ〜」

?1号「・・・・・・・・」

?1号「みんな落ちちゃった・・・・」

?2号「チャットじゃ無いんだから」

?1号「気を取り直して 次回予告だ〜」

?2号「はっきり言ってこのままだとタイトルオチが無いかも知れない問題作」

?1号「アフターサービスにご注意〜後編に アンタも決めてくれよ!」

?2号「もうやめようよ パックた予告・・・・」

本部長「あっあの〜私ってどうなるのかな?」

?1号「しらない」

本部長「シクシク・・・」

?2号「チャンチャン!」

?1号「俺もそれ言いたいな〜そうだ!今度は一緒に言おうよ〜2号〜」

?2号「お断りします・・・」

?1号「シクシク・・・」



予測されるスタッフ(声優のみ)

小次郎:子安武人  弥生:本多知恵子  ?1号:山寺宏一  ?2号:冬馬由美

まりな:三石琴乃  本部長:野沢那智  テラー:大塚明夫  男:古田信幸(笑)