「狭間の1日」![]() |
透き通るような青い空 静かに流れる風 小鳥たちのざわめきが聞こえてきそうな日 そんな日の公園で、もめる若い男女がいた。 「弥生、ちょっと待ってくれ」 「何だ、まだ言い訳をする気か?」 こんな日に、そんなに起こらなくてもいいじゃないかと、いうくらいに弥生は起こっている。それもそのはず、 今日は小次郎が、いままでのことを謝るということで小次郎の方からデートに誘った。 (実際に、コレくらいで弥生は、許してくれるはずもないのだが) しかし、待ち合わせの公園に先に着いた小次郎は、偶然に通りかかった美人(鈴田夏海)に時計を忘れた 小次郎が、時間を聞いているときに弥生が来た。 普段、女ぐせの悪い小次郎のことを知っている弥生だけに、いくら小次郎が本当ことを言っても信じてもらえ ず、すでに小次郎と弥生にやりとりは、三十分以上続いていた。 「だから、本当に時間を聞いただけなんだって、信じてくれよ、弥生」 「その話は、何度も聞いた。もっとマシな言い訳は、ないのか。」 (もう、いくら言っても信じてもらえないな。こうなったら、別の手で行くか) 「なあ、弥生」 「なんだ、」 「俺が悪かった。機嫌直して、どっか行こうよ。そうだな、あの店なんかどうだ?」 そう言って、小次郎は一軒の店を指差した。 「悪かったな、もうそんな気分じゃない。じゃあな」 そう言うと、弥生は振り向いて歩いて行った。 「おい、弥生」 小次郎が、声をかけても振り向く気配すらない。こうなると、何をしても無駄だということは、小次郎自身が一番知っていた。 お互いのことを、自分の次、いや自分以上に知っていながら、肝心の場所で素直になれない。ある意味では、子供と変わりない。もしくは、子供以下である。 公園に一人になった小次郎は、仕方なく事務所に戻ることにした。 「おい〜、氷室」 仕方なく事務所の戻ってきた小次郎は、この天城探偵事務所の唯一の所員に声をかけた。 しかし、いつもと変わりない小汚い事務所といつも居るはずの口うるさい氷室恭子がいなかった。 「出かけたのか?」 どこを見ても氷室いないので、小次郎はそう結論づけるしかなかった。 「はろはろ〜」 「ゲッ」 すぐ後ろから聞こえた声に、小次郎は思わず声をあげた。 「ぷっははは〜」 小次郎は、その笑い声を聞いて振り向いた。 「なんだ、氷室か、おどろかすなよ」 「はははあ〜、苦しい〜、あの小次郎の顔といったら、ぷっははは〜」 なんとか、笑いをこらえようとしてそれでも笑っている氷室がいた。 「そんなに、笑うなよ。」 「はははあ〜、ごめんごめん、でどうだった。」 やっと、笑いをこらえた氷室が弥生との事を聞いてきた。 「その顔からして駄目だったな。」 (こいつも弥生並みに勘が鋭いな。隠しても無駄だな。) 「ああ駄目だったよ。時計を忘れて、通りすがりの人に時間を聞いた・・」 「時に、弥生が来て、言い訳をしたが信じてもらえず別れたんだろ?小次郎らしいな。」 「その通りだ。で仕事は?」 「ない。」 そっけない答えが返ってきた。しかし、この貧乏事務所、天城探偵事務所にとっていつものこと、深刻な問題だった。 「そう、じゃあ少し寝るから用があったら起こしてくれ」 実は、小次郎は昨日の夜に、弥生に今までの言い訳とおやっさん(桂木源三郎)のことについて考えていたため、寝てなかったのだ。 「わかった。おやすみ。」 その声と共に、小次郎は眠りについた。 そのころ、弥生も小次郎とわかれて、同じく事務所に戻ってきた。 「お帰りなさい。所長」 日曜だというのに、事務所にはある程度の所員がいた。 「ああ。すまんが水をくれ。」 「あ、はい」 そう言って、弥生は所長室に入っていった。 弥生は、椅子に座り、ため息をついた。 「はあ、小次郎のやつめ。」 コン、コン、 「失礼します。」 ガチャ ドアを開けて、所員の一人が入ってきた。 「水を持ってきました。」 「ありがとう。そこの置いてくれ。」 「はい。」 女性の所員は、持ってきた水を机に置くと、ドアを開けようとした。 「後、少し一人で居たいから、誰も通さないでくれ。」 「はい。わかりました。」 ガチャ 「失礼します。」 女性の所員が出て行くと、弥生は持ってきた水に口をつけた。 ゴク、ゴク、 「ぷはあ、たっく小次郎のやつめ。ひとのことを呼んでおきながら、ナンパなんかして。本当にあの女ぐせの 悪さは、いつまでたっても直らないんだから。馬鹿は、死んでも直らないというが、あの女ぐせも、死んでも直らないな。たっく・・・・・・」 まるで、酒を飲んだように弥生は、愚痴を言い始めた。 二十分経過 「小次郎、いいかげんに話してくれたっていいじゃないか。パパが亡くなってから何か、隠しているみただし、それくらい話してもいいじゃないか・・・・・・」 四十分経過 プルルル、プルルル、 「ヒャア」 プルルル、プルルル、 「びっくりした、電話か。」 ピイッ 「はい、弥生、桂木弥生です。」 「はろはろ〜」 「まりな、か。ひさしぶり、いったいどうしたの。」 「実はさ、さっき公園で小次郎と、もめていでしょ。」 「み、見ていたの」 「ばっちりね。」 「いや、あれは、その、別に、」 「そんなに慌てなくてもいいって、それより、たまには、」 「ま〜りな〜くん」 電話の向こうから、のん気な声が聞こえてきた。 「仕事中、私事でにやにやしながら、本部の電話をかけるのやめてくれないかな〜」 「まあ、本部長、すぐに済みますので、」 「すぐにだよ、まりなくん。」 「はいはい」 「もういいかな、」 「あっ、ごめん、ところでさっきの話だけど、たまには、素直になったら、それじゃ。」 「ちょっと、まりあ、まりあー、ちょっと。」 ツーー、ツーー 「たっく、もう、勝手にかけてきて、勝手に切るなんて。」 「素直になれか。」 少し考えて、 「そうだな、謝ってくるか。」 そう言うと、ドアを開けて、 「少し、出かけてくる。後を頼む。」 「はい、わかりました。行ってらっしゃいませ。」 先ほど水を運んだ、女性の所員が弥生に礼をして見送った。 ガチャ 弥生は、事務所を出て、天城探偵事務所の小次郎のところに向かった。 「・・・はい、わかりました。はい、でわ、はい、後ほど、」 カチャ 電話を切る氷室の顔には、笑みがこぼれていた。 「ふう、久しぶりの仕事だ。さて、小次郎でも起こすか。」 ソファに、いびきをかいて寝ている小次郎のところに向かった。 「おい、小次郎仕事だぞ。起きろ。」 「ガァ〜、ガァ〜・・」 起こそうとしている氷室の対して、小次郎はいびきで返事をした。 「おい、起きろ、小次郎、小次郎〜。」 氷室は、必死に起こそうとするが小次郎は、まったく起きるようすはない。 「たっく、もう、小次郎のやつ。」 「こうなったら。」 氷室は、小次郎の上に乗って、悪戯し始めた。 「小次郎、起きないともっと悪戯するぞ。」 「う〜ん、氷室?」 半分、寝ぼけながら、小次郎は起きた。 「やっと起きたか。仕事だぞ、仕事。」 氷室は、小次郎が起きるのを確認して降りようとしたとき、 バタン 突然、ドアが開き弥生が入った来た。 「さっきは、ごめんな小次郎。すまんな言い訳も聞かないで・・・・」 弥生は、下を向きながら話しているため、まだ小次郎をはっきり見ていない。氷室と小次郎は、目を点にして弥生を見ている。 「・・・・・それでな、小次郎、おまえさえよければ、これからどっかいかないか?あっ!!」 やっと、弥生は顔を上げて小次郎を見て驚いた。小次郎の上に、氷室が乗っているのだ。 「やあ、弥生」 「久しぶり、弥生さん」 「小次郎の馬鹿‐‐‐‐‐‐‐‐‐!!」 「グワーーー」 バッタン 弥生は、小次郎をおもいっきりぶん殴って、出って行った。 氷室は、吹っ飛んだ小次郎を見て、呟いた。 「そのうち、弥生さんを殺人未遂を調査しなくては」 「お、起こして」 小次郎は、ひっくり返りながら言った。 そして、一日が終わる。 |