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風が、嵐に変わりつつあった。 「リシャス様。」 「階級で呼べ。」
「はっ、報告します。」 硝子に映るのは、髪の長い女。鋭い目つきに、金の髪。 後ろで敬礼した若い男は、この村で育った男だった。 「交戦が始まりました。暴徒どもは我々が居ることを知らなかったようです。
「…はっ、しかし…あそこは…」
嵐が、くるな。 リシャスは、そうつぶやくと、自分で自分を抱いた。 -The heart of hydrogen-
自分の背と同じくらいのひまわりの間。
「馬鹿野郎、なんで匂わなかった!」
曹長はもう、ダンの言うことは聞いてなかった。
撃ちながら、下がる。視線を飛ばした。
銃で狙われるのも瞬間的に忘れて、ダンはそう叫んだ。
「向こうに一人いるぞ!」
(死にたくない、死にたくないよ!) そう言いながら、それでもダンは曹長の言ったとおりに走った。
銃光。 ダンの口先から、悲鳴が出た。脇腹から血を噴き出し、ひまわりをいくつか潰すようにして、飛ばされる。
「やったか。」
「人戦車(マン・タンク)を出す。向こうにも軍人崩れが居る。」
リシャスは、走行トラックの荷台からゆっくりと降りてくる3人の部下を見た。落ちくぼんだ目で、敬礼する彼女の部下達。
リシャスは振り向いた。
曹長は、拾った犬と徒党を組んだ仲間達とは別の方に、ひまわりを揺らさないように動きはじめた。 「あの犬も、最後にゃ役に立ったじゃねぇか。」
粗末な衣服を着た少女は、少しだけ頬を赤らめると、ひまわりの花の中から現れた。
倒れている同じ年頃の少年に近付く。手で触れると、汗とおひさまの味がした。
もう一度。
口を少しだけ開けて、声にならぬ息を出すと、少女は、少年に栄養が足りないと確信した。
抱き寄せ、ダンの頭を抱える少女。 自身も痩せぎすな少女は、周囲を不安そうに一度見ると、目をきつくつぶって少年の唇に舌を入れた。
蟲の匂い。そして、甘い味。 ダンは、少しだけ瞳を開けると、少女を見た。 そして、気を失った。
シーン1 了 |